それぞれの職責と所得

 以前働いていた会社が直営店舗をやることになり、僕はOPEN前準備として大阪店から
出張で福岡の本社に来ていた。

僕はその時27歳で一応1ブランドの長だった。

手が足りなそうだったので、私も商品への値札付けの作業を行っていた。

その時、当時の社長が様子を見に来られ、僕に仰った。

「君は何をしているのかね」

「用意が間に合いそうもないので、値札付けを手伝っています」

「高い値札付けだね」

社長は吐き捨てるように仰って、去って行かれた。

若き日の僕は何だよと思い、やる気がなくなったのを今でも覚えている。

でもその後、年を重ね、自分の立場が徐々に変わりつつある時に気付いた。

自分がそんな事をしていてはならないのだ。

単純作業をやるための給料を僕はもらっていない。

単純作業イコール低賃金ではないが、僕が貰っていたサラリーはその額を超えていた。

社長はその事を仰っていたのだ。

僕はブランド長の給料分の仕事をやっていなかったのである。

そう思うと、例えば僕らが物流倉庫で入出荷などで手一杯の時に、一緒に働いていた
パートの女性たちは、「こんなに忙しいんだから、社長も手伝えば良いのに」とか
恨めしそうに言っていたが、それは明らかに間違いである。

パートはパートの仕事、ブランド長はブランド長の仕事、社長は社長の仕事をやるべき
である。

それゆえに、パート、ブランド長、社長はそれに見合った所得を得るのだ。

もちろん、当社は中小零細企業である。

だから、僕がパートさんの仕事をやる瞬間もあるかもしれない。

でも、それが僕の仕事ではない。

作業をする事で漫然と時が過ぎるのを、看過してはならない。

僕はその事で所得を得ているわけではない。

その作業をやる事で、仕事をした気になっては決していけない。

僕は常務取締役の仕事を遂行していかなくてはいけないのだ。

JUGEMテーマ:ビジネス
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