この勝ちは東京ドームより重い

 89年の11月、空前の格闘技ブームの中、新生UWFは東京ドームに進出する。


大会は大成功、今振り返るとUの頂点はあの時だったような気がする。

そんな同日に札幌で全日本プロレスの興行があった。

カードは天龍&ハンセンの龍艦砲VS馬場&ラッシャー木村の義兄弟コンビ

だった。

正直その頃の僕は、受験勉強でろくにプロレスに熱が入っていなかった。

だからTVで見る前から、ハンセンのラリアートで木村がフォール負けだなと

勝手に予想し、斜に構えてブラウン管の前に座った。

1時間後、試合が終わっても僕は興奮が収まらなかった。

何と天龍が馬場をフォールしてしまったのだ。

もちろん馬場の頑張りも凄まじかった。

ほとんどを一人で戦い抜いたし、ラッシャーも頑張った。

だけど天龍がフィニッシュホールドであるパワーボムで、馬場をリングに

叩き付けたあの瞬間が、あれから25年経った今でも僕の脳裏に鮮烈に焼き

ついている。

控え室の天龍源一郎は「今日のこの勝ちは東京ドームより重い」と言う。

そこにはUの興行にほとんどの記者が行ってしまい、いつもより注目度が

少なかった大会ではあったが、「プロレスはそうはいかないよ」という

天龍の反骨心の表れだったのではないだろうか。

高校生の終わりがけで、何となくガキのくせに社会の事が分かった気でいた

僕は、強い衝撃をその言葉に受けた。

天龍には意地という、最近の大人さえも忘れているものを今でも教えて

もらっている気がする。

プロレス万歳。

JUGEMテーマ:スポーツ
目次