LIVE FOR TODAY 天龍源一郎 映画を鑑賞して

かっての好敵手、スタン・ハンセンが天龍源一郎のTシャツの胸のプリントを見てこう言う。

 

「REVOLUTION」

 

天龍は笑顔で答える。

 

「STILL REVOLUTION」

 

スタンも微笑み、「今だって革命中か、、君は大したもんだ」

 

あれから30年経った。

 

REVOLUTIONを胸に掲げ、天龍源一郎の熱き革命ロードがスタートしたあの暑い夏の日から。

 

天龍源一郎の魅力はいくつもあるが、その一つに現状に甘んじようとしないところがある。

 

かって、天龍革命と呼ばれたそれがある程度の成果を出し、その結果を受け、それなりのポジションに収まり、本体の重鎮としてあとはのんびりレスラー人生を送ることも出来たはずだ。

 

でも、天龍はそれを良しとせず、格闘人生の大海原へと船を漕ぎだした。

 

常に新しいものを求め、刺激を求め、長いものに巻かれず、そして義理を忘れない天龍の生き様に、僕らファンは酔った。

 

今回、天龍の引退が決まって引退するまでの姿を撮影したドキュメンタリー映画「LIVE FOR TODAY」が公開され、僕はようやく鑑賞する機会を得た。

 

そこに一貫して映し出されるのは、天龍という男の生き様の根幹である「絶対に自分に付いてきてくれた人、自分を信じてくれた人を裏切らない」という事であった。

 

正直、レスラーなんか嘘つきが多い。

 

ファンのためなんて言うが、それの本質は物凄く薄っぺらい。

 

でも、天龍は違った。

 

天龍は引退するまで決して僕らファンを裏切らず、命の次に大切なものを払って天龍に夢を乗せた僕らに、常にそれ以上のものを返してくれた。

 

かっての盟友・阿修羅原の訃報に際し、マスコミは天龍の気持ちを知りたがったが、天龍は一言、「僕は彼については一切喋りませんから」と言い放った。

 

そこには本当に辛苦を共にし、心の底より分かち合った友の死を悲しみ、それを安っぽく口に出してしまうと、彼との刎頸の交わりが無になってしまう、、そういう男同士の友情があったと僕は思う。

 

本当に腹の底から付き合ったから、今更他人に話すことなど何もない、、そう言い切れる関係が果たして僕らにあるだろうか。

 

天龍にとって阿修羅、阿修羅にとって天龍、そんな阿吽の相方など僕に今後できるとは到底思えない。

 

天龍は最大のライバルであった、故ジャンボ鶴田の墓参りにも向かい、墓標にこう語りかける。

 

「ジャンボ、もうここには来ないよ。次に会う時はあの世だよ」

 

思い出話に何の意味があろうか。

 

そんな事していたら、あの青春の全てをぶつけ合った2人の戦いが陳腐なものになってしまうではないか。

 

過去ではなく現在を生きる、天龍はそう思う。

 

そう考える天龍の潔さが清々しい。

 

天龍のかっての後輩達、川田、小橋、小川が控室を訪れる場面も良い。

 

天龍の事を心の底から尊敬しているからこそ集い、また天龍も彼らに対して非常に真摯だ。

 

昔観た、荒野の七人という名映画のラストシーンを彷彿させた。

 

べたべたしないが、ただ心の底から大切にしている、そんな男同士の素晴らしい友情シーンだった。

 

天龍は、自分は本当は安定志向で、常に安住の地を探していて、ここでもない、あそこでもないと常に旅を続け、その結果新しいものを求め続けて、進化をして、苦労をして、、その姿をファンが面白がって見てくれたのかなと自分を評したが、まさにその通りだった。

 

天龍がもう少し世渡りが上手かったら、もっと楽な人生だったろうにと思う。

 

でも、安きに低きに流れないからこそ、天龍源一郎は天龍源一郎であり、僕らはそんな天龍源一郎が大好きで、支持し続けたのだ。

 

そんな天龍源一郎の生き様が詰まった今回の映画。

 

ぜひ、プロレスなんてつまらないフィルターを通さずに、男の中の男の人生ドラマだと思って観て頂きたい。

 

この映画の最後に娘の紋奈さんが引退した天龍に問いかける。

 

「最近のプロレスって好き?」

 

「いや、好きじゃない」

 

「それって、天龍ロスって事じゃない笑」

 

「ああ、俺が一番そうなのかもな爆」

 

僕もそうだ。

 

天龍源一郎がいないプロレスって全然面白くない。

 

はっきりした。

 

僕はプロレスファンではなく、天龍ファンだったんだ。

 

僕の人生におけるたった一つの誇りは、ずっと天龍源一郎のファンだった事。

 

人生に大切な事は全て天龍源一郎から学んだ。

 

、、ただ、嫁さんを大切にせずに逃げられちゃった事は教えを守れなかった。

 

天龍さん、それもっと早く教えてよ笑

 

 

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