努力の方向を間違えない ― 今のアパレルに必要な「頑張り方」

「努力すれば報われる」──かつてアパレル業界では、この言葉がごく自然に通っていました。
けれど今は、努力しても報われない人が増えています。
それは決して努力が足りないからではなく、努力の方向がずれているから。
長くこの世界にいると、そのことを痛感します。


目次

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■1.昔の“努力”は、手を動かすことだった

僕が若い頃の努力は、徹夜でサンプルを仕上げたり、展示会に足を運んだり、
とにかく「現場で動くこと」でした。
仕事量=成果、そんな時代です。

でも今は、同じ量をこなしても結果が出ない。
なぜかというと、努力のベクトルが変わっているからです。
“動く努力”よりも、“考える努力”“伝える努力”が求められるようになった。


■2.今のアパレルに必要なのは「見せる努力」

どんなに良い商品でも、見せ方を間違えれば伝わらない。
SNSの写真一枚、動画の数秒で印象が決まってしまう時代。
つまり今は、「見せる努力」こそが売る努力なんです。

昔のように「分かる人だけ分かればいい」というスタンスでは、
誰の目にも止まらない。
逆に、等身大でも誠実な発信を続ける人は、
ブランドの規模に関係なくファンを増やしている。

努力は、「表に出す方向」に向けないと届かない。


■3.職人の努力と、経営の努力

モノづくりの現場では、
「いいものを作る努力」を軽んじてはいけません。
ただ、それを“売る努力”と分けて考えないことが大切です。

縫製や素材選びに全力を注ぐのも努力。
でも、それをどう伝えるかを考えるのも、同じくらい大切な努力。
この2つがそろって初めて、商品は“動く”。

「作る努力」と「売る努力」は、どちらか一方では意味を成さない。

両方あって、初めて“売れる商品がいい商品”になる。


■4.努力は「量」ではなく「質」と「方向」

努力とは、量を競うものではなく、
方向を定めて積み重ねるものだと思います。

たとえば、SNSでの発信が苦手なら、
誰に何を伝えたいのかを一度整理するだけで、努力の密度が変わる。
現場で手を動かす職人も、
“どう見せたいか”を意識するだけで、仕上がりの印象が違う。

同じ1時間でも、「向き」を間違えなければ結果は変わるんです。


■5.結論 ― 努力の方向を整える

アパレルに限らず、今の時代は“正しい努力”が報われる世界になりました。
だからこそ、

「頑張ること」より、「何に向かって頑張るか」。

つくる努力と、売る努力。
この2つを意識して回し続けること。
それが、これからのアパレルが生き残るための唯一の方法だと思います。

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